“工合(ぐあ)” の例文
「どうも初めてというものは、工合(ぐあ)いの悪いものでしてな……私などもつい三月ほど前にここに来たのですが、始めは弱りましたよ」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
まるで小鳥に餌(えさ)をやるような工合(ぐあ)いにお口に押し込み、のろのろといただいているうちに、お母さまはもうお食事を全部すましてしまって、そっとお立ちになり
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
といつても、始め一寸(ちょっと)した時期のあひだ宗右衛門は、それが成功したと思つた。こんな工合(ぐあ)ひなら五日も経(た)てば容易(たやす)く何ともなくなるだらうと思つた。次には閉ぢてゐた眼をやや細めに開けた。
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
それにどうしてか、このごろはよく風邪(かぜ)をひいた。散歩したとては、咳嗽(せき)が出たり、湯にはいったとては熱が出たりした。煙草を飲むと、どうも頭の工合(ぐあ)いが悪い。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
学校へ行く途々(みちみち)も、こっそり両腕を前方へ差し出し、賞品をもらう真似をして、シャツの袖が、あまり多くもなく、少くもなく、ちょうどいい工合(ぐあ)いに出るかどうか
おしゃれ童子 (新字新仮名) / 太宰治(著)
手下たちは、しめた、あの工合(ぐあ)いではもう大丈夫、と帰る途々(みちみち)首肯(うなず)き合い、主人にその様子を言上すれば、山賊の統領はにやりと凄(すご)く笑い、案外もろく候、と言った。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「どうして、こう気分がすぐれないんだろう。どうかしなくってはしかたがない」などと時にはみずから励ました。しかしやっぱり胃腸の工合(ぐあ)いはよくなかった。寝汗も出た。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
理解させずば止まぬ工合(ぐあ)いの、けちな啓蒙、指導の態度、もとより苦しき茨(いばら)の路(みち)、けれども、ここにこそ見るべき発芽、創生うごめく気配のあること、確信、ゆるがず。
創生記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
姉さんには少し工合(ぐあ)いが悪かったけど、とにかくここへ一緒にやって来てみたら、姉さんは東京のお友達のところへ出掛け、その時ふと、僕は死ぬなら今だ、と思ったのです。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
という工合(ぐあ)いの何一つ面白くも、可笑(おか)しくもない冗談がいつまでも、ペラペラと続き
メリイクリスマス (新字新仮名) / 太宰治(著)
かねて、こんな時にこそ焼きもちを焼いてもらうために望んでめとった女房ではあったが、さて、実際こんな工合(ぐあ)いに騒がしく悋気を起されてみると、あまりいい気持のものでない。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「上原さん、あそこのね、上原さん、あそこのね、あああ、というところですがね、あれは、どんな工合(ぐあ)いに言ったらいいんですか? あ、あ、あ、ですか? ああ、あ、ですか?」
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
母をも誘ったのであるが、母は、おなかの工合(ぐあ)い悪く留守。武田神社は、武田信玄を祭ってあって、毎年、四月十二日に大祭があり、そのころには、ちょうど境内の桜が満開なのである。
春昼 (新字新仮名) / 太宰治(著)
というような工合(ぐあ)いで、一刻も早く酔っぱらいたく、どんどん呑んだ。
酒ぎらい (新字新仮名) / 太宰治(著)