山上さんじょう)” の例文
こうした巡礼の日が続いていると、夢ともなくうつつともなしに山上さんじょうを鳥のように駆け走る仙人の姿を見るようになった。
仙術修業 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
少佐は見晴台から更らに山上さんじょうへの細道を辿って見ようと考えた。殆んど道とはいえないような道を小半丁も登ると、林が開けて五六坪の平らな草原に出た。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
妙海 (いよいよいら立ちて)あのすさまじい風の勢いが、山上さんじょう山下さんげから焔の波を渦まき返してあおり立てるのでございます。ほんとに手間を取ってはいられませぬ。
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
ふもとのすこし手まえにある御岳みたけ宿しゅく町中まちなかも、あしたから三日にわたる山上さんじょう盛観せいかんをみようとする諸国しょこく近郷きんごうの人々が、おびただしくりこんできていて、どこの旅籠はたごも人であふれ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御岳ののぼり口には、いくつもの小屋やうまや湯呑所ゆのみじょなどがっていた。いま山は紅葉もみじのまっさかりで、山腹さんぷく山上さんじょう、ところどころに鯨幕くじらまくやむらさきだんだらぞめ陣幕じんまくが、樹間じゅかんにひらめいて見える。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)