“尿（しし）” の例文
登勢、尿（しし）やってんか。へえ。背中さすってんか。へえ。お茶のましてんか。よろしおす。半刻ごとにお定の枕元へ呼びつけられた。
蛍 (新字新仮名) ／ 織田作之助(著)
「よけいなお世話のようですが、さっき掛けた女衆が、嬰児（あかご）に粗相（そそう）をさせたんでまだ、尿（しし）で濡（ぬ）れている筈で、——お値だんは同じ事、こちらへ、お腰かけなさいまし」
無宿人国記 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
行（ゆく）尿（しし）の流れは臭くして、しかも尋常の水にあらず、淀（よど）みに浮ぶ泡沫（うたかた）は、かつ消えかつ結びて、暫時（しばし）も停（とど）まる事なし、かの「五月雨（さみだれ）に年中の雨降り尽くし」と吟（よ）んだ通り
十二支考：03　田原藤太竜宮入りの話 (新字新仮名) ／ 南方熊楠(著)
すかと剥（は）ぐ蟹の甲羅は黄のとろを尿（しし）ぶくろほぜりとりてすてたり
夢殿 (新字旧仮名) ／ 北原白秋(著)
霜の立っている土の上に、無心な嬰児（あかご）の尿（しし）が湯みたいにそそがれた。四郎は狼狽して
親鸞 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
母が手に埋もる子ゆゑに曼珠沙華ひたと凝視（みつ）めて尿（しし）放つあはれ
風隠集 (新字旧仮名) ／ 北原白秋(著)
「オオ、泣くな、泣くな……」縁の上から、嬰児（あかご）に尿（しし）をさせ初めた。
親鸞 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
ひとすぢに尿（しし）放つなり。
海豹と雲 (新字旧仮名) ／ 北原白秋(著)