尾行)” の例文
十二神オチフルイ!」と館林様は叱るように云われた。「お前、このわしを尾行けて来たのだろう。江戸から尾張へ! つけて来たのだろう」
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そばには続いて彼を尾行ける為めであろう、箕島刑事も先に降りて茫然と手持無沙汰に立って居た。彼は切符を渡す時、黒服赤襟の女車掌の耳元へ口を摺寄すりよせた。
乗合自動車 (新字新仮名) / 川田功(著)
慥に私の車が後を尾行けているのを知って、どうにかして巻こうとしているらしかった。その中、先の車は何と思ったか急に速力を弛めて、とある家の前で停った。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「どうしたものだおめえは、他人ひとあとなんぞ尾行けてつて、つみだからろよ」一人ひとりがいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「例の二人の同心を連れて、あれあれ向こうへ歩いて行く。……見え隠れにお前尾行けてってくれ……いつもの符牒を角々に貼ってよ」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
浅田は車夫を呼止めようとしたが、ふと考え直して黙って後を尾行けて行った。
秘められたる挿話 (新字新仮名) / 松本泰(著)
それさえあるに今日は卑怯、我らが後を忍びやかに、尾行けさせ立ち聞きさせおったな! ……あらば申せ、いい訳あらば申せ!
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「小母さんの後を尾行ければ、きっと手紙の差出人が判明わかると思います」
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
(しめた、お吉は九十郎の妾、あいつの後を尾行けて行ったなら、九十郎の在所ありか知れるかもしれぬ。……つきとめてお浦を取り返してやろう)
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
尾行ける者ありと知ったのでもあろう、もう鼓を打とうとはせず、その人影は走って行った。その走り方を一眼見ると
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
が、その時佐久間町のほうから、鈴江と駒雄とを尾行けて来た、友吉の一団が走って来て、美作と兵馬とへ味方をした。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
菊女にもしものことがあったら、助太刀せよという兵庫の命により、見え隠れに尾行けて来た民弥なのであった。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……尾行けて来なさるとは先刻承知、ナーニ実はわっちの方から、此処までご案内したんでさあ。
天主閣の音 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「さよう」というと南部集五郎は、二歩ふたあしほど前へ進み出たが、「尾行けて参った、深川からな」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すると、その後から見え隠れに、一人の旅人が尾行けて行った。それを友蔵は知らないらしい。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「お供するとは迷惑だな。送り狼に尾行かれたようなものだ。お銀、どうしたものだろうな?」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
尾行いて来るようでございます。……気味の悪い男が……私達の後から……」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
呼び掛けもせず、切っても掛からず、いつも同じ間隔を置き、ヒタヒタと尾行けて来る人影から、何んとも云えない一道の殺気が、鬱々として逼るのは、いったいどうしたというのだろう?
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
娘を尾行けて浅草から、この屋敷へまでやって来た。と、娘はこの家へはいった。そこで自分もこの家へはいった。すると外から戸をとざされ、自分はこの家へ監禁され、娘はそれ以来姿を見せない。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
老人老婆の後を尾行け、陶器師はフラフラと歩いて行った。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)