尊崇そんそう)” の例文
檢校になると、世の尊崇そんそうを集めるばかりでなく、官物官金の配當、名目金貨付の收益など、おびたゞしい役得が附隨ふずゐしたのでした。
解っても解らいでも仏に対してはただこれを尊崇そんそうするというのがこの辺の人の習慣であります。その仏堂に私は住み込むことになりました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
この詩は維新後森枳園きえんが刊行した。抽斎はただに家庭において王室を尊崇そんそうする心を養成せられたのみでなく、また迷庵の説を聞いて感奮したらしい。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
其の前を礼拝らいはいして過ぐるのを見た、と云われたほど時人じじん尊崇そんそうされた菅三品の門に遊んで、才識日に長じて、声名世にいた保胤は、に応じて及第し、官も進んで大内記だいないきにまでなった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一体現今のインド人はハルダハルの方から流れて居る川をガンジスの源流として尊崇そんそうして居るが、古代はこのマブチャ・カンバブを源流としたことがありました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
抽斎は『老子』を尊崇そんそうせんがために、先ずこれをヂスクレヂイにおとしいれた仙術を、道教の畛域しんいき外にうことをはかった。これは早くしん方維甸ほういでん嘉慶板かけいばんの『抱朴子ほうぼくし』に序して弁じた所である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかもかみは宮廷よりしもは庶民までが尊崇そんそうしている恵心院僧都そうずの弟子であり、又僧都の使命を帯びているということもあり、彼の人柄も優にやさしかった大内記のひじり寂心の弟子であるということもあり
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
衣類を黒紋附もんつきに限っていた糸鬢奴いとびんやっこの貞固は、もとより読書の人ではなかった。しかし書巻を尊崇そんそうして、提挈ていけつをそのうちに求めていたことを思えば、留守居中稀有けうの人物であったのを知ることが出来る。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)