とりで)” の例文
この図に乗せてと、周瑜は、南郡へ攻略をすすめ、五ヵ所のとりでを粉砕して、いまやそこの南郡城に肉迫して陣を取った日であった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仙道七郡を去年の合戦に得たまいしよりのこと、それを今更秀吉の指図に就かりょうとは口惜しい限り、とてもの事に城を掻きとりでを構え、天下を向うに廻して争おうには、勝敗は戦の常
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
霊感のたむろ。——たましひのとりで
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
「ほ。そんなお人の推薦すすめもあり、しかもまた、ご辺ほどな履歴と腕のある人物を、なぜ王倫おうりんは、とりでの主座にすえないのでしょう」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ここには、晁蓋ちょうがい統領以下、とりでのおもなる者、ずらりといる。もいちど、ことこまかに、宋先生の大難とかをよう説明してくださらんか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とりでの門の一つは、彼ひとりの手で奪回した。しかしまたたちまち、長槍を持った騎兵の一群が、歩卒に代って突進して来た。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見張っているとりでや、城門の屋根に、わらわらと、落葉がこぼれてくる。ひとりの兵は、むしゃむしゃと紅葉もみじを喰っていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「豪傑、ぜひ今夕は、われわれのとりでまで来てくださらんか。仔細はその上でおびするし、また、お身の上も伺いたい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一方の典韋は、宵から大鼾おおいびきで眠っていたが、鼻をつく煙の異臭に、がばとはね起きてみると、時すでに遅し、——とりでの四方には火の手が上がっている。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とりでの山の中腹にたたずんで、じっと、此方を眺めていた、蔵六の眼を突然愕かせたものは、その小冠者の姿だった。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とりでにかえって、げきをとばし、諸洞の猛者をあつめて、正しく戦法を練り、ふたたび蜀軍と一合戦ひとかっせんする」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
千早ちはや金剛山こんごうせんは云わずもがなである。この辺はどんな小山も窪地くぼちも、さくとりででないところはない。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半永久的なとりでの構築をである。曹仁は、築造奉行となって、渭水の淵に船橋を架け、二万人の人夫に石材木を運搬させ、沿岸三ヵ所に仮城を建つべく、日夜、急いでいた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「西のとりでが危険です」と、注意したにもかかわらず、そう気にもかけず眠っていた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「後、わが主力は北へ渡り、堤にそってとりでを構築し、しばしば失敗したあげく、氷の城まで築かれましたが、丞相も初めには、こう早く戦が終ろうとはお思いなさらなかったものでしたか」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
曹操の炯眼けいがんでは、「彼の西のとりでこそ手薄だな」と見た。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「急に、閣を引払って、城外のとりでへ移ったそうだな」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とばかりとりでの人々に歓ばれた。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)