寡聞くわぶん)” の例文
僕は不幸にも寡聞くわぶんの為に仏蘭西フランス人はルナアルをどう評価してゐるかを知らずにゐる。けれども、わがルナアルの仕事の独創的なものだつたことを十分には認めてゐないらしい。
國立劇場といふものが無代むだいのものかどうかを知らないあたしは、各國の國立劇場がどういふ組織のものか——寡聞くわぶんなあたしはこんな時小山内氏に聞くのだが、悲しくも恰度其日その夜
むぐらの吐息 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
西洋に女子の紅潮こうてうを歌へる詩ありや否や、寡聞くわぶんにしていまだ之を知らず。支那には宮掖閨閤きゆうえきけいかふの詩中、まれに月経を歌へるものあり。王建わうけん宮詞きゆうしいはく、「密奏君王知入月くんわうにみつそうしつきにいるをしる喚人相伴洗裙裾ひとをよんであひともなつてくんきよをあらふ
予の寡聞くわぶんを以てしても、甲教師は超人哲学の紹介を試みたが為に、文部当局の忌諱きゐれたとか聞いた。乙教師は恋愛問題の創作にふけつたが為に、陸軍当局の譴責けんせきかうむつたさうである。
入社の辞 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
僕の為に感激していはく、「君もシエリングの如く除名処分を受けしか」と! シエリングもまた僕の如く三十円の金を出ししぶりしや否や、僕はいま寡聞くわぶんにしてこれを知らざるを遺憾ゐかんとするものなり。
その頃の赤門生活 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)