寝醒ねざ)” の例文
旧字:寢醒
「無駄だよ、すがいい。それに亭主の死骸のそばで手荒なことをしちゃ、いかに御用でも寝醒ねざめがよくねえ」
お浜とても、今まで寝醒ねざめのよいことばかりはなかったのですが、今という今、苦しがる郁太郎のかおに文之丞の末期まつごの色がある。天井でさわぐ鼠の音、それが文之丞の声。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「葉村君は私の気持を少し好意的にみすぎたんですよ。あれじゃ全然葉子を叩きつぶすようなもので、私も寝醒ねざめが悪くて仕様がありませんから。一つ取り消していただきたいと思って……。」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
銀座あたりをおそくまでのそのそとほっつき歩いた疲労つかれから、睡眠ねむりも思ったよりむさぼり過ぎたためか、妙に今朝の寝醒ねざめはどんよりとしていたので、匆々そうそうタオルと石鹸を持って飛び込んで来たのだった。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
前に夏の部で評釈した句「五月雨さみだれ御豆みず小家こいえ寝醒ねざめがち」
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)