家重代いえじゅうだい)” の例文
「この会社の裏で独逸人と決闘をしたという話がある。大将が家重代いえじゅうだいの国光を振りかぶったら、先方は腰を抜かしてしまったそうだ」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
村正の刀は十年前に或る浪人から百両で買ったもので、持ち主は家重代いえじゅうだいだと言った。水も溜まらぬ切れ味というので、籠釣瓶かごつるべという銘が付いていた。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこには夫のと、人形のと、二つのむくろが折り重なって、いた血潮ちしおの海、二人のそばに家重代いえじゅうだいの名刀が、血をすすってころがっているのでございます。
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
家重代いえじゅうだいのよろいを着、美刀を横たえ、かぶとは、床几わきの小姓武者に持たせている。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なお附近にはきさの小川、うたたねの橋、柴橋しばはし等の名所もあって、遊覧かたがた初音の鼓を見せてもらいに行く者もあるが、家重代いえじゅうだいの宝だと云うので、しかるべき紹介者しょうかいしゃから前日にたのみでもしなければ
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それが世にすぐれたる銘刀であるので、拙者はしきりに欲しくなって、相当の価でゆずり受けたいと懇望したが、家重代いえじゅうだいの品であるというので断られた。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
または家重代いえじゅうだいというようなわけで古い人形を保存する人、一種の骨董こっとう趣味で古い人形をあつめる人、ただ何が無しに人形というものに趣味をもって、新古を問わずにあつめる人
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
家重代いえじゅうだいの刀を手放そうなどというのは余りに馬鹿ばかしくも思われた。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
くて一年ばかりも過ぎると、或夜あるよ何者か城内へ忍び入って、朝高が家重代いえじゅうだい宝物ほうもつたる金のかぶとを盗み去ったのである。無論、その詮議は極めて厳重なものであったが、その犯人は遂に見当らなかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
福井は家重代いえじゅうだいの大鎧をきて、兜をかぶって太刀をいて泳いだ。
鐘ヶ淵 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)