実見じっけん)” の例文
旧字:實見
あまりの不思議さにその道を辿っていったら、果然、夢に見馴れた景色のその土地に到着した。これは自分の友人が親しく実見じっけんした奇話である。
取り交ぜて (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
俳優やくしゃというものは、如何どういうものか、こういうはなしを沢山に持っている、これもある俳優やくしゃ実見じっけんしたはなしだ。
因果 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
おまけに、続出する被害者の身分まで厳正に一定され、いままた、こうして犯人の顔を実見じっけんした者さえ出てきたにかかわらず、ついに捕縛ほばくの日を見ることなくして終ったのだ。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
の当り実見じっけんしたのは初めてだと流石さすがのこの男が私に話したのであった。
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
しかし幸か不幸か、まだ自分には、まるで実見じっけんがないが、色々他人から聴いたのを、少しはなしてみよう。
テレパシー (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
私の実見じっけんは、ただのこれが一度だが、実際にいやだった、それはかつて、麹町三番町こうじまちさんばんちょうに住んでいた時なので、其家そこ間取まどりというのは、すこぶれな、一寸ちょいと字に書いてみようなら
女の膝 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
十時頃にならねば眼が醒めぬという朝寝坊の友人が実見じっけんした事柄である。眼の醒める時分に眼を醒ますと、いつでもとこに若い女の顔が見える。しばらくして始めて消える。
取り交ぜて (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
これは学友某の実見じっけんである。夜中になると戸棚から、今まで見た事もない素敵な美人が出て来て、辰雄たつおさん、此方こちら光来いらっしゃいなと無理に誘い出す。翌朝になると、屹度きっと蚊帳かやの外へ半身を出している。
取り交ぜて (新字新仮名) / 水野葉舟(著)