しなや)” の例文
しなやかではあるがあらい手で私の全身からだじゅうさすっている。その快い触覚が疲労と苦痛とで麻痺している私の肉体からだいたわってくれる。私の意識は次第次第に恢復するように思われた。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
つい——としなやかな体を横に入れて、露八のそばへ坐ると、露八は跳び起きて
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、美しくえんなおつぼねが、白くしなやかな手で、びつを取つて引寄せた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と言いながら、笑靨えくぼの入ったしなやかな手を俺の方へさし伸べた。
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
書類を揃えているしなやかな指先から一枚の紙が抜き取られた。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
何んたる軽捷けいしょう! 左門は、背後うしろざまに縁の上へ躍り上がった。構えは? 依然として逆ノ脇! そこへ柳が生えたかのように、しなやかに、少し傾き、縁先まで追って来た頼母を見下ろしている。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しなやかではあるが粗い掌の絶え間ない触覚を感じていた。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
引かれてしなやかに振り返ったが
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)