嫋娜すらり)” の例文
其処に唯一人、あのひとが立ったんです。こうがいがキラキラすると、脊の嫋娜すらりとした、裾の色のくれないを、潮が見る見る消して青くします。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女は、薄色縮緬うすいろちりめんのお高祖こそ眉深まぶかに冠つたまゝ、丑松の腰掛けて居る側を通り過ぎた。新しい艶のある吾妻袍衣あづまコートに身を包んだ其嫋娜すらりとした後姿を見ると、の女が誰であるかは直に読める。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ト台所の方を、どうやら嫋娜すらりとした、脊の高い御婦人が、黄昏たそがれに忙しい裾捌すそさばきで通られたような、ものの気勢けはいもございます。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
瓜核顔うりざねがおで品のいい、何とも云えないほど口許くちもとやさしい、目のすずしい、眉の美しい、十八九の振袖ふりそでが、すそいて、嫋娜すらりと中腰に立って、左の手を膝の処へ置いて、右の手で
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その左右の欄干の、向って右へ、嫋娜すらりと掛って、美しい片袖が見える。ト頬杖ほおづえか何か、物思わしい風情で、じっとこっちをながめるらしい、手首が雪のように、ちらりと見えるのに、顔は榎に隠れたんだ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)