ねたま)” の例文
邪推深い目付でうかがい澄していた源のことですから、お隅の顔の紅くなったのが読めすぎる位読めて、もうねたましいで胸一ぱいになる。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
禍福はあざなえる繩の如く、世は塞翁さいをうが馬、平家の武士も數多きに、時頼こそは中々にねたましき程の仕合者しあはせもの
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
その時代にある公卿くげの女が、何か人を恨めることがあって、貴船きふねの社にこもり、ねたましと思う女を祈り殺そうとしたという古伝があるが、その古伝によると、女は人無きところに籠り
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
……私がこの村を沈めたら、美しい人の生命いのちもあるまい。鐘をけばあだだけれども、(と石段をしずかに下りつつ)このの二人は、ねたましいが、うらやましい。姥、おとなしゅうして、あやかろうな。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)