いずく)” の例文
而して、今万物自然の理を得、其れいずくにぞ哀念かこれ有らん、とえる、流石さすが孔孟仏老こうもうぶつろうおしえおいて得るところあるの言なり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかれどもさらに一層を突進して論ずれば、その非常の事たりしがためのみ。彼は非常を愛して、凡俗の行をなすを厭う。もし衆人みな独木橋まるきばしを渡らば、彼いずくんぞ喜んで渡らん。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
さてはうまいぞシテったり、とお通にはもとより納涼台すずみだいにも老媼は智慧を誇りけるが、いずくんぞ知らむ黒壁に消えし蝦蟇法師の、野田山の墓地にあらわれて、お通が母の墳墓の前に結跏趺坐けっかふざしてあらむとは。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いずくんぞ礼義を治むるにいとまあらんや。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
しかれども塞外さくがいの事には意を用いること密にして、永楽八年以後、数々しばしば漠北ばくほくを親征せしほどの帝の、帖木児チモル東せんとするを聞きては、いずくんぞ晏然あんぜんたらん。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今万物自然の理をいずくんぞ哀念かこれ有らん。皇太孫允炆いんぶん、仁明孝友にして、天下心を帰す、よろしく大位に登るべし。中外文武臣僚、心を同じゅうして輔祐ほゆうし、もっが民をさいわいせよ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)