奇異ふしぎ)” の例文
しかし、ここに奇異ふしぎというのは、間もなく横蔵の場合と、符合したかのように、慈悲太郎が悪疫にたおされてしまったからである。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
先頃村に火事が起きて、近所は丸焼に焼けてしまつたが、その富豪かねもちやしきのみは奇異ふしぎと無事に助かつた。
それから年を經て、私はそのがたのなかに「ムツゴロ」といふ奇異ふしぎな魚の棲息してゐることを知つた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
それは何となしに猿に着物を着せたやうで、私には奇異ふしぎに感ぜられた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
現に、騎西家の人達は、その奇異ふしぎおきて因虜とりことなって、いっかな涯しない、孤独と懶惰らんだの中で朽ちゆかうとしていたのであった。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
さうしてふちの赤い黒表紙の讚美歌集をまさぐりながらそのまま奇異ふしぎな眠に落ちるのが常であつた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
その後貴女のねやを訪れた人も、コマンドルスキーの海底でこの世を去った艇長も、同様シュテッヘでありまして、しかもなお奇異ふしぎな事には
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
奇異ふしぎなる新らしき生活いとなみに蛙らはとんぼがへりす。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
しかし、ここで奇異ふしぎは、南北の四谷怪談であるが、それだけは、かつてこの一座の舞台に上ったためしがなかったのである。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
どうしただか、これ、ふんとに奇異ふしぎだぞ
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しかし、ここになによりまして奇異ふしぎなのは、そこ一帯の風物から、なんとも云えぬ異様な色彩が眼を打ってくることだった。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
にほひ奇異ふしぎあせばみ、そのうへにさしかくる
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
となおもヴィデが、奇異ふしぎな比喩めいた言葉を云いつづけようとした時、一人の私服が、詳細な屍体検案書を手に入って来た。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
人間心理の奇異ふしぎな機構が、ついに時江を誤殺した——その一筋の意識も、ほどなく滝人には感じられなくなってしまった。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ああ、それが淡路君なんでしたか。それなら、何もそう、奇異ふしぎがる理由はない訳じゃありませんか。きっと、あの男ですよ——貴女にそう云う悪戯いたずら
オフェリヤ殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
四人は、みかけた維納腸詰ウイン・ソーセージみ下すこともできず、しばらくは、奇異ふしぎな、浪漫的ロマンチックな、悪夢のなかを彷徨さまよっていた。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
法水君、この自殺の奇異ふしぎな点だけは、君が、十八番のストイック頌讃歌パニジリックからショーペンハウエルまで持ち出してきても、恐らく説明はつかんと思うね。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そうでなくてさえ儀右衛門は、そうと知ってからというもの、双体畸形特有の、奇異ふしぎな心理に翻弄されはじめた。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ところで、それについて、ぜひにも貴方の御助力が必要になりましてな。実を云うと、その底深い淵の中から、奇異ふしぎな童謡が響いてくるのを聴いたのでしたよ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
しかし、いま考えると、それがディグスビイの印らしいので、それから推すとたぶんこの葬龕カタファルコも、あの男の奇異ふしぎな趣味と、病的な性格を語るものに相違ないのだよ
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
また、それが、妙に自分とばかり通い合う、奇異ふしぎな存在ではないかとも考えられてきた。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ところが、どんな都市でも、その切り口を跨いだあたりに奇異ふしぎな街があるのだ。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)