大天井おてんしょう)” の例文
もう時間が遅いから最初の予定通り槍の殺生小屋までは辿り着けない、けれども大天井おてんしょう迄は楽に行ける。それで午前十時御出発のことに取極めた。
穂高のうしろに低く聳えた大天井おてんしょう岳と常念岳が、夕日の照り返しを受けて、萌黄もえぎ色にパッと明るくなっている、野飼いの牛が、一本路をすたすた登って来たが、そこには
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
越路こしじの方の峰には、雲が迷っていたけれど、有明ありあけ山、つばくろ岳、大天井おてんしょう、花崗石の常念坊じょうねんぼう、そのそばから抜き出た槍、なだらかな南岳、低くなった蝶ヶ岳、高い穂高、乗鞍、御嶽おんたけ、木曾駒と
雪の武石峠 (新字新仮名) / 別所梅之助(著)
蝶ヶ岳や常念岳は其前に稍や低いが、大天井おてんしょうの一群は流石さすがに高い。野口五郎岳が蛙岩げえろいわの上から頭を出している。
美ヶ原 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
北アルプスの大天井おてんしょう岳にどこか似ていると思いながら、あえぎ喘ぎ登る、霧は大風に連れ、肉をぐばかりの冷たさで、ヒューッと音をさせて、耳朶を掠めた、田村氏の帽子は
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
あるいは名の知られていない高山が多い、地理書の上では有名になっていながら、山がどこにくれているのか、今まで解らなかったのもある——大天井おてんしょう岳などはそれで——人間は十人並以上に
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
八ヶ岳と蓼科山との間に奥穂高、常念、大天井おてんしょうから鹿島槍、五竜に至る北アルプスの大立物が、銀光さんとして遥かの空際を天馬の如く躍っている。籠ノ塔の後には岩菅いわすげ山らしいものさえも望まれた。
釜沢行 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
草原を右に登って仙人山の頂上に立つと、東に五竜、鹿島槍の二山が仙人尾根の上に頭をもたげ、黒部別山の右に、舟窪の尾根を超えて、はるか大天井おてんしょう、常念あたりが朧げな姿を雲間に垣間見せていた。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)