外輪そとわ)” の例文
東京名物の一銭蒸汽の桟橋につらなつて、浦安通ひの大きな外輪そとわの汽船が、時には二艘も三艘も、別の桟橋につながれてゐた時分の事である。
雪の日 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
遠くから外輪そとわの旧式の蒸汽船が古ぼけた青塗のペンキのわるく色の褪せた小さな船体を此方に見せながら、茶色の烟をあたりに漲らせつゝやつて来るのが。
ひとつのパラソル (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
修行者でも商人あきんどでも宜く巡礼の姿に成って来ることが有るが、汝は手入らずの処女きむすめちげえねえ、口の利きようから外輪そとわに歩く処は、何う見ても男のようだが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
陰陽一上一下、続け打ちに五、六打合ううち、思いがけない河内房の足がツと新九郎の内股へ入って外輪そとわにぱッと蹴離したので、木剣にばかり気をとられていた彼は
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あねごとしては、オイ忠々、オイ忠的などとあっしに毒づきながら、外輪そとわに元気よく歩いた方が、どんなに似合うか知れやしねえ。……いけませんね、お守りなんか。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
外輪そとわがゆるやかに胸の上に垂れ、九カラット、八カラット、順次に三、二、一カラットから、〇・八五、六五までのもの、いずれも欧州一といわれる粒りのダイヤばかり
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
と云うのは、これも拇指だけがズバ抜けて大きいのだが、わけても気味悪いことには、先へ行くにつれて、耳のような形に曲りはじめ、しかもその端が、外輪そとわり返っているのだ。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
下まで落ちて来る間に手拍子をちょうと一つ打って、その手で受け止めると、右の手で水返しのあたりをつかんで、十文字を外輪そとわにして、自分の身体を心棒に、独楽こまのようにブン廻しをはじめました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
斯く堅牢に造られし盾の外輪そとわに、神工は
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
東京名物の一銭蒸汽の桟橋につらなって、浦安うらやす通いの大きな外輪そとわの汽船が、時には二そうも三艘も、別の桟橋につながれていた時分の事である。
雪の日 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
またその小さやかな水が瀬となりたきとなり淵となつて、次第に大きくなつて、帆を浮べたり外輪そとわの小蒸汽を浮べたりしてゐるといふことが面白いではないか。
水源を思ふ (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
眉深まぶかにかぶっている編笠をとらないので、そのおもざしはうかがえぬが、一見、たけ高く肩幅広く、草履をすって外輪そとわに歩いてゆく足どりなど、どうも、心得のある武士らしく思われる。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)