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なつくさ
それをどこまでもいくと、
広い
原っぱへでました。そこは
霞ガ
浦のふちで、
一面に
夏草がはえしげっています。夏草には
夜露がしっとりとおりています。
夏草やつわものどもが、という
芭蕉の碑が
古塚の上に立って、そのうしろに
藤原氏三代栄華の時、
竜頭の船を
泛べ、
管絃の袖を
飜し、みめよき女たちが
紅の
袴で渡った、
朱欄干
世を恨み義に勇みし
源三位、數もなき白旗
殊勝にも宇治川の
朝風に飜へせしが、
脆くも破れて空しく一族の
血汐を
平等院の
夏草に染めたりしは、諸國源氏が
旗揚の先陣ならんとは
玉藻かる
敏馬を
過ぎて
夏草の
野島の
埼に
船ちかづきぬ 〔巻三・二五〇〕 柿本人麿