墨守ぼくしゅ)” の例文
もっとも水晶に針金を封じ込む方法はちゃんとあるので、こういう旧式な手法を墨守ぼくしゅするのは少し馬鹿気ているという議論も出るかもしれない。
実験室の記憶 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
諸君公徳などと云う野蛮の遺風を墨守ぼくしゅしてはなりません。世界の青年として諸君が第一に注意すべき義務は自殺である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
地上の人類が、現在のごとき非合理的法律を墨守ぼくしゅして居る限り、ず改善の見込は絶無であろう。
革命の国でありながら世にもっとも旧慣墨守ぼくしゅの国たるこの国の、ごく古くからの習慣に従って、試験は七月に、一年じゅうのもっとも酷暑のころに、行なわれたのだった。
これ北斎をしておのずから一派一流の法式を墨守ぼくしゅするのいとまなからしめたる所以ゆえんならずや。この点において北斎はまことに泰西人の激賞するが如く不覊自由ふきじゆうなる独立の画家たりしといふべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
活花いけばなにても遠州流など申して、一定の法則を墨守ぼくしゅ致し候も有之候へども、これ恐らくは小堀遠州こぼりえんしゅうの本意にはあるまじく、要するに趣味は規則をはづれて千変万化する所に可有之候。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
今なお鼠を殺すと埃溜ごみための中へ、持って行くだけの改良法も採用せず、依然として百年以前の旧様式を墨守ぼくしゅし、これを表通りの街路の上にほうり出して、車の輪の蹂躙じゅうりんゆだねている。
世にも度し難きは、人間界にこびりついている古い古い僻見へきけんであり、又ドウにも始末に行かぬのは、宗教宗派の墨守ぼくしゅする数々のドグマである。これは『時』の流れに任せる外に途がない。