堪忍かに)” の例文
その悲鳴がまた、じっと耳を澄ましていると、「堪忍かにしてくれエ!」というのではなく、「助けてくれエ!」というようである。……
何から何まで見透しでお慈悲深い上人様のありがたさにつくづく我折って帰って来たが、十兵衛、過日こないだの云い過ごしは堪忍かにしてくれ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……(息子むすこの額や頬や頭にキスする)可愛いわたしの子、堪忍かにしておくれ。……罪ぶかいお母さんをゆるしておくれ。不仕合せなわたしを赦しておくれ。
「あらまた、厭ねえ、貴下あなたは。後生ですからその(お米は幾干だい、)と云うのだけは堪忍かにして頂戴な。もう私は極りが悪くって、同行は恐れるわ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「サアシヤがわるい、(さだ子)サアシヤがわるい。ね堪忍かにして、堪忍してえ!」
脱殻 (新字旧仮名) / 水野仙子(著)
「ほんまにお前にも苦労さすなあ。堪忍かにしてや。しかし、なんやぜ、よそへ貰われるより、こないしてお祖父じいやんと一緒にまま食べる方が、なんぼ良えか判れへんぜ。な、そやろ? そない思うやろ?」
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「もう堪忍かにして下さつて。」
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
すると美佐子は彼の叱咜しったをキッカケにして一層声を放って泣いた。「堪忍かにして下さい、あたしあなたに今日まで隠していたことがあるのよ」
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いやご免ご免、堪忍かにしておくれ。お前の言うとおりだろうとも。……お前は気前のいい、鷹揚おうような女だからな。
堪忍かにして下され口がきけませぬ、十兵衛には口がきけませぬ、こ、こ、この通り、ああありがとうござりまする、と愚かしくもまた真実まことにただ平伏ひれふして泣きいたり。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こう、按摩さん、舞台のさし堪忍かにしてくんな。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
堪忍かにして! 堪忍して!」
脱殻 (新字旧仮名) / 水野仙子(著)
堪忍かにして上げない。」
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
堪忍かにしてくれエ!」とか、「御免よう!」とかいうらしい声が、途切れ途切れに、さも哀れッぽく、力なく響いた。
堪忍かにして下され、様子知ってははばかりながらもう叱られてはおりますまい、この清吉が女郎買いの供するばかりを能の野郎か野郎でないか見ていて下され、さようならば
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ああもうたくさん、堪忍かにしておくれよ」
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
嗚呼私が馬鹿でござりました、のつそりは何処迄ものつそりで馬鹿にさへなつて居れば其で可い訳、溝板でもたゝいて一生を終りませう、親方様堪忍かにして下されわたしが悪い
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「看護婦附キデ泊ッタリスルト手数ヲカケルコトニナルカラナ。ソレニ颯子モイルコトダシ、———颯子ハ南禅寺ヘ泊ルノハ懲リ/\ダカラ、ソレダケハ堪忍かにシテクレト云ッテルンダ」
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
夫人 堪忍かにして下さいまし。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「譲治さん、悪かったから堪忍かにしてッてば!………堪忍して、堪忍して、………」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一時の料簡違ひは堪忍かにして下さる事もあらう、分別仕更て意地張らずに、親方様の云はれた通り仕て見る気にはなられぬか、と夫思ひの一筋に口説くも女の道理もつともなれど、十兵衞はなほ眼も動かさず
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
堪忍かにして、………譲治さん! もう今度ッから、………」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「譲治さん、堪忍かにしてね、………」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)