堡塁ほるい)” の例文
要するにまったく恐ろしいものだった。浮浪の徒の堡塁ほるいだった。くつがえされた多くの荷馬車はその斜面を錯雑さしていた。
それは砂町一丁目と上大島町の瓦斯ガスタンクを堡塁ほるいのように清砂通りに沿う一線と八幡やわた通りに沿う一線に主力を集め、おのおの三方へ不規則に蔓延まんえんしている。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
世界大戦は済んだとは云え、何処か知らで大なり小なりの力瘤ちからこぶを出したり青筋を立てたり、鉄砲を向けたり堡塁ほるいを造ったり、造艦所をがたつかせたりしている。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それは両親の家計がはなはだ豊かでなかったためでもあるが、ともかく、フランクの困難な生活はその時から始まり、一八四八年パリ市中に築いた革命戦争の堡塁ほるいじて
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
さて、ヴァンヌの川を横に突っ切り、ヴィルヌウヴ・S・Yの二等堡塁ほるいを右に見て、道なき道を求めながら行くうちに、人里離れた乾沢地の低い築堤のそばまで来かかった。
母が日傘ひがさを横にして会釈えしゃくし、最早もう熊本に帰っても宜しゅうございましょうかと云うた。いとも/\、みんなひどい目にったなあ。と士官が馬上から挨拶あいさつした。其処そこ土俵どひょうきずいた台場だいば——堡塁ほるいがあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
逸作には、人間の好みとか意志とかいうもの以上に、一族に流れている無形なたくましいものが、かの女を一族の最後の堡塁ほるいとして、支えているとしか思えなかった。それは既に本能化したものである。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
彼はテーブルをもって即座の堡塁ほるいとした。