なんなん)” の例文
全集によって初めてこの草稿が世に出て以来、既に十年になんなんとする年月が経っている。
名物赤福餅あかふくもちの旗、如月きさらぎのはじめ三日の夜嵐に、はたはたと軒をゆすり、じりじりと油が減って、早や十二時になんなんとするのに、客はまだ帰りそうにもしないから、その年紀頃としごろといい、容子ようすといい
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時に元文五年で、師が三十二歳、弟子ていしが十三歳であつた。弥六は後京都にあつて南宮なんぐう氏と称し、名はがく、字は喬卿けうけい、号は大湫たいしうとなつた。延享中に淡淵は年四十になんなんとして芋生から名古屋に遷つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
黒田家の家來栗山父子は若年の主君を輔導すべきであるのに、よはい八十になんなんとする備後は兎も角も、大膳が引き籠り居るは不都合である。出勤させるやうに取り計はれたがよろしからうと云ふのである。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)