地謡じうたい)” の例文
志村金五郎しむらきんごろうのワキで羽衣はごろもを舞った老公のすがたが、あざやかに橋がかりから鏡の間へかくれ、つづいて囃子方はやしかた地謡じうたいが静かに退いたあとである。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから仕手方シテかたを本位とする地謡じうたい囃子方はやしかた、狂言等に到るまで、同曲の荘厳と緊張味とを遺憾なく発揮し得なければ
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
お聞きなさい——橘さん……いやしくも東京から家元同格の貴下あなたがおいでだと云うで、今夕こんせき申合もうしあい打合せのために出向いた、地謡じうたい、囃子方一同は、念のため、酒席といえども
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
芝居の引幕は能のまくとは趣を異にして居るやうではあるが、しかし元はやはり揚幕から出た考へであらうと思ふ。チヨボ語りの位置は地謡じうたいの位置と共に舞台に向つて右側の方にある。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
地謡じうたいの調子でなのりあげると、文女は迸りでるような声で
西林図 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それは翁の最後のお能のお稽古であったが、翁は地謡じうたい座の前の椅子に腰をかけ、前に小机を置いてその上に置いた張盤はりばんを打って朔造氏の型を見ていた。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
ある地方で私の師であるAという人の「俊寛」の能がありまして、私も地謡じうたいの末席として招集されましたので、私は職業の方を二日ばかり休むことにしました。
所感 (新字新仮名) / 夢野久作(著)