土塵つちぼこり)” の例文
すこし風が吹いて土塵つちぼこりつ日でしたから、乾燥はしゃいだ砂交りの灰色な土をふんで、小諸をさして出掛けました。母親は新しい手拭てぬぐいかぶって麻裏穿あさうらばき
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
歩調をそろえた靴の音が起った。カアキイ色の服を着けた新兵はゾロゾロ窓の側を通った。金目垣かなめがき一つ隔てた外は直ぐ往来で、暗い土塵つちぼこりが家の内までも入って来た。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
馬博士は帽子を掴潰つかみつぶして狂人きちがいのように振回す。樺は奮進の勢に乗って、すさまじく土塵つちぼこりを蹴立てました。それと覚った源が満身の怒気は、一時に頭へ衝きかかる。如何いかんせん、樺は驀地まっしぐら
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それは海の口村で殿下の御着おちゃくを報せるのでした。物売る店のあたりから岡つづきの谷の人は北をさして走ってまいります。川上から来た小学生徒の一隊は土塵つちぼこりを起てて、馳走かけあしで源の前を通過ぎました。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
やがて馬の姿も黄色い土塵つちぼこりの中に隠れて見えなくなりました。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)