四目垣よつめがき)” の例文
四目垣よつめがきの裾には赤い百合が幾株も咲いていた。わたしは飛んでいるあぶを追おうとして、竹切れでその花の一つを打ち砕いてしまった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と低い四目垣よつめがき一足ひとあし寄ると、ゆっくりと腰をのして、背後うしろへよいとこさとるように伸びた。親仁おやじとの間は、隔てる草も別になかった。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その左右の青々とした、新しい四目垣よつめがきの内外には邸内一面の巴旦杏はたんきょうと白桃と、梨の花が、雪のように散りこぼれている。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……その時、向うの亭の木蔦きづたのからんだ四目垣よつめがきごしに、写真機を手にした明さんの姿がちらちらと見えたり隠れたりしているのにお前は気がついた。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
祖父の代にはそちらが四目垣よつめがきになっていたので、沼のけしきはよく見えたが、父はそこへ板塀をまわしてしまったので、いまでは家の中からは見ることができなくなっていた。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
四目垣よつめがき内外うちとの菊の乱れかな
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
(七月十三日の午後。若侍二人、一人は花鋏を持ち、一人は如雨露じようろを持ちて、枝折戸のそばに立ち、四目垣よつめがきにからみたる朝顏に水をやつてゐる。)
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
……その時、向うのちん木蔦きづたのからんだ四目垣よつめがきごしに、写真機を手にした明さんの姿がちらちらと見えたり隠れたりしているのにお前は気がついた。
楡の家 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
低い四目垣よつめがきにかぶさっている萩の葉の軽いそよぎにも、どこにか冷たい秋風のかよっているのが知られて、大きいとんぼが縁のさきへ流れるように飛んで来た。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
門口かどぐちには目じるしのような柳の大木がえてあって、まばらな四目垣よつめがきの外には小さい溝川どぶがわが流れていた。
庭の中程に低い四目垣よつめがきを結って、その垣の内だけを庭らしくして、垣の外はすべて荒地にして置いたので、夏から秋にかけてはすすきや雑草が一面に生い茂っている。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)