囈語げいご)” の例文
囈語げいごは口部の神経だけ醒覚したるなり。あるいは手足の運動神経のみ醒覚して、耳、目、鼻、口等の神経なお睡眠せることあり。眠中の歩行、これなり。
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
しかれども恐らくはその解釈は怪の一字を解し得ざるべく、しからざれば一字一句金鉄きんてつの如く緻密に泰山たいざんの如く動かざる蕪村の筆力を知らざる者の囈語げいごのみ。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
しかして予が生涯の唯一の記念たる、この数枚の遺書をして、空しく狂人の囈語げいごたらしむる事勿れ。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
講談の囈語げいごにて終るべきものとは思はず、正統非正統の論争、遂に黒白を分つの要あるを知らず、吾人の前によこたはれる実際問題の、斯くの如く重大なる者あるを軽んじて
一種の攘夷思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
他方には理性の批判にえないどころか普通の常識にも負くるような、愚劣低級な囈語げいごもって、神懸りの産物なりと唱え、大なり、小なり始末に負えぬ特殊部落を作って
そして彼らは、前時代の穏和な囈語げいご者らを、空想的な理想主義者らを、人道主義の思想家らを、ただに軽蔑するだけでは満足しないで、社会に害毒を流す者と見なしていた。
ハイネが静夜の星を仰いで蒼空における金のびょうといったが、天文学者はこれを詩人の囈語げいごとして一笑に附するのであろうが、星の真相はかえってこの一句の中に現われているかも知れない。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
死の前三日間は母国語をもって囈語げいごを発し昏睡を続けていられましたが、死の直前意識は極めて明瞭に返り、当地の言葉をもってロゼリイス姫並びに父君エフィゲニウス氏に告別の辞を述べられ
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
こんな傍若無人ぼうじゃくぶじん囈語げいごを吐いてひとりで恐悦きょうえつがるのである。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一夜例の如く発熱詩の如くの如き囈語げいご一句二句重畳ちょうじょうして来る、一たび口を出づればまた記する所なし。中につきて僅かに記する所の一、二句を取り補ふて四句となす。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
たまたま背後の支配霊達が、何等なんらかの通信を行うことはありても、その内容は通例末梢まっしょう的の些事さじにとどまり、時とすれば取るに足らぬ囈語げいごやら、とり止めのない出鱈目でたらめやらでさえもある。