嘲弄からか)” の例文
「まあ、待ち給え、そんなこと云ったって、君は一体誰のお蔭で今日まで生きて来たのかね」静三は熱狂する甥をふと嘲弄からかってみたくなった。
昔の店 (新字新仮名) / 原民喜(著)
「おちやん、おいとしぼや。……」なぞと、お駒を嘲弄からかふものもあつたが、お駒は洒々として、襷がけで働いてゐた。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
食卓語テエブルスピーチは巧くやつて退けたし、加之おまけ美味うまい七面鳥は食べたしするので、ル氏は顔に似合はずその晩は上機嫌だつた。で、一言爺さんに嘲弄からかつてみた。
「アハハハ。お前達に肝を取られるような間抜じゃない。今のは鳥渡ちょっと嘘をいて嘲弄からかったのさ。ざまを見ろヤイ」
猿小僧 (新字新仮名) / 夢野久作萠円山人(著)
⦅こんなものあ、別に珍らしくもなんともないぢやないか? 一日に十ぺんだつてこんな草なら見てゐらあな、何が不思議なもんか? あの悪魔づらめが、ひとを嘲弄からかひくさるのぢやないかしらん?⦆
「あたしを嘲弄からかうの?」
海浜荘の殺人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お光は一時嘲弄からかはれてゐるのではないかと思つたが、あとさきの文句より推すと、眞面目であることが窺はれる。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
こんな風にう者も遇う者も皆姫を気違いか馬鹿扱いにして、散々嘲弄からかってはおあしを持って行ってしまったから、一時間と経たぬうちに姫の財布はすっかり空っぽになってしまった。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
お駒が酒のお酌か何かに道臣の居室ゐまへ入つて、長いこと密々話ひそ/\ばなしなぞしてゐる時、定吉は別に何事をも感ぜぬらしく、竹丸を嘲弄からかつたりして面白さうにしながら
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
私はちょっとの変に可笑おかしくなった。この場合に似合わしくない話だけれども事実であった。何だかお伽話にある獅子の王様が、狐に嘲弄からかわれている芝居を見るような気がしたからである。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
二十歳はたちから呑んだらえゝ、十七ではまだ早い。」と、お駒は圓い眼にこびたゝへて嘲弄からかふやうに言つた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
笑ひながら千代松の嘲弄からかふのを、お駒は眞面目に受けて首を振つてゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
臺所の方では、猪之介が何やら言つて下女を嘲弄からかつてゐるのが聞えた。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)