啓蒙けいもう)” の例文
英語書生対手あいて啓蒙けいもう的な語学雑誌であったが、やはり当時の欧化熱が産出したもので、日本人の手に成った外国語雑誌の開山である。
かかる写実主義の愚劣であり、啓蒙けいもうとしての外に意味がないことは、前にも既に説いたけれども、なおもう一度根本的な駁撃ばくげきを加えておこう。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
これほど、実証的なやり口があるものか、と其頃もっとわからずやであった私は、かまわず、そうした啓蒙けいもう批評をいい気になって続けて居た。
歌の円寂する時 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
あなたの大好きな魯迅先生は、所謂いわゆる「革命」に依る民衆の幸福の可能性を懐疑し、まず民衆の啓蒙けいもうに着眼しました。
返事 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それに向って肩肘かたひじをはっていたような閑子を、昔からいろんな形でどれほどミネは啓蒙けいもうしたことか。そういう意味でならミネもまたひのえうまを問題にはしていた。
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
近代啓蒙けいもう主義の倫理における幸福論は幸福のモラルから成功のモラルへの推移を可能にした。成功というものは、進歩の観念と同じく、直線的な向上として考えられる。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
教師の心べきことは何よりもまず世界の知識を児童に与えることで、啓蒙けいもうということに重きを置き、その教則まで従来の寺小屋にはないものであった。単語図を教えよ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
単なる啓蒙けいもうや宣伝のみで政治に感化を及ぼすことを考え、初めから政権の獲得ということを考えない政治クラブや、結社や、その他のいわゆる「圧力団体」といわれるものと
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
国家的観点に立脚した啓蒙けいもう道場であり、特に皇道学的な真理を究明し、これを実践的にプロパガンダする使命、というおごそかな先生の主張からすれば、八田青年の云うとおり
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
是に比べると一方は話上手はなしじょうずで要点をおさえ、したがうてまたちがいが有れば見つけやすい。ことに小野氏の『啓蒙けいもう』などは、啓蒙というだけあっていつも心安く、物を尋ねに近よって行かれる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
孟建は孔明よりも年上だし、学問の先輩でもあったが大いに啓蒙けいもうされて
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の率直さはそんな偏見を持つすべての人々を啓蒙けいもうすることができたであろうが、彼はまたひどく不精なので、とっくに興味のなくなっている事がらをこのうえあげつらう気にはなれなかったのだ。
識者の啓蒙けいもうを待つばかりである。
化け物の進化 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
仏蘭西フランス十九世紀に起ったこの文学運動は、正しく浪漫派への反動であり、時代思潮の啓蒙けいもう運動を代表している。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
こうした人々の試みる短歌の批評が、分解批評や、統一のない啓蒙けいもう知識の誇示以上に出ないのは、もっともである。
歌の円寂する時 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
ただただわけもなしに付和雷同する人たちの声は啓蒙けいもうの時にはまぬがれがたいことかもしれないが、それが郷里の山林事件にまで響いて来るので、半蔵なぞはハラハラした。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
政治闘争の手段は無数だが、直接行動と啓蒙けいもう説得との二つの方法に大別することができる。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
したがってこの『詩の原理』は、かかる文壇に対する挑戦ちょうせんであり、あわせてまた当時の詩壇への啓蒙けいもうだった。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)