唇辺くちもと)” の例文
緑雨は恐らく最後のシャレの吐きえをしたのを満足して、眼と唇辺くちもとに会心の“Sneer”をうかべて苔下にニヤリと脂下やにさがったろう。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
ちよつと」と戸口より半身を示して、黄金きんの腕環の気爽けざやか耀かがやける手なる絹ハンカチイフに唇辺くちもとおほいて束髪の婦人の小腰をかがむるに会へり。えんなるおもてに得もはれず愛らしきゑみをさへ浮べたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
が、緑雨のスッキリした骨と皮の身体からだつき、ギロリとした眼つき、絶間たえまない唇辺くちもとの薄笑い、すべてが警句に調和していた。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「女が悪いんだ。女の方から持掛もちかけたんだ、」とU氏は渋面じゅうめんを作って苦々にがにがしい微笑を唇辺くちもとに寄せつつ
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
緑雨の眼と唇辺くちもとに泛べる“Sneer”の表情は天下一品であった。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)