和泉町いずみちょう)” の例文
それからお松は、お君のために心配のあまり、神田の和泉町いずみちょう能勢様のせさまというのへ参詣をすることになりました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
神田・同朋町どうぼうちょう。さらに晩秋には、神田・和泉町いずみちょう。その翌年の早春に、淀橋よどばし柏木かしわぎ。なんの語るべき事も無い。朱麟堂しゅりんどうと号して俳句に凝ったりしていた。老人である。
あの和泉町いずみちょう一勇斎国芳いちゆうさいくによしさんが今度の御政事向の事をばそれとなく「みなもと頼光らいこう御寝所ごしんじょの場」にたとえて百鬼夜行ひゃっきやこうの図を描き三枚続きにして出したとかいう事で御座ります。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
祖母が言ったことがある、あの職人は、鼠小僧ねずみこぞうによく似ていると——鼠小僧は神田和泉町いずみちょうにすんでいたが——区はちがっても和泉町は近かった——祖母はよく見て知っていたといった。
長崎で世話になった唐人あちゃさんが、今、江戸へ上って来ているから、一寸、挨拶をして来ると言って、新堀町しんぼりちょうで女中を返し、自分ひとりで神田和泉町いずみちょう陳東海ちんとうかい仮宅かりたくへ訪ねて行ったところ
えゝ四方よもで、彼家あすこでは好い酒を売ります、和泉町いずみちょうでは彼家ばかりで、番頭がわっちを知ってるので、私が買いにくと長谷川町の番太が来たって別に調合を仕ないで、一本生いっぽんぎの鬼殺しを呉れますが
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
鼠小僧ねずみこぞうの家は、神田和泉町いずみちょうではなく、日本橋区和泉町、人形町通り左側大通りが和泉町で、その手前の小路が三光新道、向側——人形町通りを中にはさんで右側大通りが堺町、およびがくや新道
本所ほんじょ。鎌倉の病室。五反田ごたんだ同朋町どうほうちょう和泉町いずみちょう柏木かしわぎ新富町しんとみちょう。八丁堀。白金三光町しろがねさんこうちょう。この白金三光町の大きな空家あきやの、離れの一室で私は「思い出」などを書いていた。天沼あまぬま三丁目。天沼一丁目。
十五年間 (新字新仮名) / 太宰治(著)