しわ)” の例文
土肥のしわぼうが、藩では、いちばんの金持ちだといわれておる。吾々の親父も、みんな、貴公の親父から、利息金を借りているんだ。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伯父の一人は自殺し、一人は家を出て、気違いのようにしわくなった祖父と五十年つれそった祖母との間に不思議な生活が始まった。
「柿を守るしわき法師が庭に出でてほう/\といひて烏追ひけり」という子規居士の歌もあり、漱石氏はまた『野分』の一節にこれを用いて
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
かくて気候至って穏やかに、三日たば四月になるという時、三月、牧羊夫に子羊を求むると、たちまちしわくなって与えず。
あの有松屋の婆さんのようにしわい人は有りませんわ、何でもたべろという事が有りません、だからねお芋や何か買っても、あなたも知って入らっしゃるけれども
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
爪に火を灯すような、江戸第一番のしわぼうの鳴子屋は、いかにもそれくらいのことがありそうです。
羊飼はひどくしわい男でしたから、初のうちはなかなか承知しそうにもありませんでしたが、三人が口を揃えてうるさく強請せがむので、ぶつくさ呟きながらも引請けるには引請けました。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
あれあしわん坊にすぎないんだ! おれは君の性質をよく知ってるがね、彼奴の家へ行って、銀行バンクの一番もやったり、ボンボンの一本にでもありつけようと思ったら、それこそ飛んでもない間違いだよ。
『藩の御用なれば、たとえ、どう損がゆこうと身を粉にしようと、愚痴ぐちなどは申しませぬが、あのしわい大野様からの吩咐いいつけなので』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しわくて狂人のようになった祖父と五十年連添った祖母との間に不思議な生活ぶりが始った。
「え、——まアまアあのしわぼうにしては、清水の舞台から飛降りたつもりでしょうよ」
「さすがに、しわい御大将。お目のつけどころが偉い。またそれへ蘭丸とは、打ってつけのよいお使い」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、あのしわぼうが、意気で貸してくれた金だ。人間、意気には感じる。手紙を書こうか」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しわんぼ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)