吃水きっすい)” の例文
性格や心理は、表面に現れた行動によってのみ描くべきではないのか? 少くとも、たしなみを知る作家なら、そうするだろう。吃水きっすいの浅い船はぐらつく。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
あの海坊主を射った時、ちょっと霧が切れて、流血船がはっきり見えたでしょう? 船長、あの時僕は、流血船の吃水きっすいがいやに深いのに気がついたんです。
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「よし貝谷。かまうことはないからあの船へ一発だけ小銃をうってみろ。吃水きっすいよりすこし上の船腹をねらうんだ」
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
俵の数は約二百俵、五十こく内外の米穀べいこくなれば、機関室も甲板デッキ空処あきも、隙間すきまなきまでに積みたる重量のために、船体はやや傾斜をきたして、吃水きっすいは著しく深くなりぬ。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すなわち艦艇においては吃水きっすい下、舷側並びに船底におびただしき区画を設け、もし砲弾これに貫通するも海水の浸入この一区画を満たすに止まるように工夫してあるのと
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
横浜で印度インド綿花と南洋材を全部上げてしまうと、今度は晩香坡行バンクーバゆきの木綿類を吃水きっすい一パイに積込つみこむ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
吃水きっすい線部のオートライまで吊り足場を下げて、船首からともへわたる数十組の足場足場の工員は、熟練した動作で、レッド・ペン缶を片手に、迅速な仕事を争っていたのである。
艦の損傷としてはこの他にも右舷吃水きっすいのすぐ上に、まだ二カ所ばかりの大穴が開けられていた。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「大いによろしいだ。じゃあ早速さっそく今日から、おれたちは船大工ふなだいくになるてえわけだ。吃水きっすいの浅いボートを一隻、できるだけ早く作りあげるんだ。いいかね、しっかりやってくれ」
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
舷側は、張板はりいたが二つに割れるように見事に切れた。しかし、あまり切れすぎて、吃水きっすい以下までけてしまったものだから、待っていましたとばかり海水がどんどん艦内へ突入してくる有様だった。