可憫かわい)” の例文
そういって彼を信頼している人——寂しく年老いてゆくこの可憫かわいそうな人をば、このまま置き去りにすることが出来るものか。
(新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
これは巌谷さんの所へ言って来たのであるが、先生は、泉も始めて書くのにそれでは可憫かわいそうだという。慈悲心で黙って書かしてくだすったのであるという。
と叫びながら、可憫かわいそうな支那兵が逃げ腰になったところで、味方の日本兵が洪水こうずいのように侵入して来た。
「おれの用を何だと思ってるんだろう。おれは何も悪いことをするんじゃなし、叩き起したっていいじゃないか。奴は何も知らねえんだな、可憫かわいそうに」
乞食 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「騒いだって駄目だよ。先刻さっきおれが来たときに慌てなければならなかったんだ。お前さんとこの倅はな、可憫かわいそうに、重い荷馬車を胸に載っけているぜ」
乞食 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
医員は何となく可憫かわいそうになって来た。そして一種の好奇心からか、それとも何か云ってやらねばあんまり無愛想だとでも思ったのか、ふと彼女に問いかけた。
碧眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
それで頼りになるのは子供だけなんでございますから、わたし達は、死んだ赤ん坊が可憫かわいそうだといっては泣き、生き残った赤ん坊が判らないといっては泣きました
二人の母親 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
そんなことがあるもんですか……よくも云えたものだ……一体何のうらみがあって、わたし達にそんな濡れ衣を着せるんだね……ああ、あの子が可憫かわいそうだ……わたしは、ど
情状酌量 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
可憫かわいそうに、気がれたか。信心ぶかいひとだったがなア、わからんもんじゃ。一体どうしたんだろう。御覧、自分で自分の顔をこんなに傷だらけにしている。誰か早くお医者を
老嬢と猫 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
こうした秘密を知った以上は、父親と食卓に向き合って、『可愛い倅』と呼びかけ、『可憫かわいそうなお母さんの思い出』を語る父の言葉をば、どうして顔を赤らめずに聞かれよう。
(新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
乞食はきにぐったりと疲れてしまった。それに、馬が可憫かわいそうでたまらなくなった。
乞食 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
そりゃ私だって感情というものがありますから、死者を可憫かわいそうだとは思います。
青蠅 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「それは可憫かわいそうな。ほんとうにお気の毒だね。それで、どうしても外出がしたいというなら、出かけなさい。風邪を引かんように気をつけてね。明日は帰って来なければいけないよ」
碧眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
これがお前の仕事さ。お前は左手でこの可憫かわいそうな女の頸を絞めながら、右手で胸にナイフを突き刺したのだ。ここで、その晩の行動をもう一度繰りかえしてみろ。頸の傷痕へお前の指を
青蠅 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
可憫かわいそうに、倅はひどく沈鬱ふさいでいるようだな。母親のへやへ行ったのか、まアうっちゃっておけ……何だか家の様子が変って、おれも急に老けたような気がする。でも倅がいるので大助かりさ。
(新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
あれ可憫かわいそうに……まだ若いだけに……大そう狼狽あわてて、それは大変だ
情状酌量 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)