“可憐(いじ)” の例文
「あの娘(こ)がいとしい、可憐(いじ)らしい。これへ招いて、幸右衛門から杯などやって欲しい。十内どの、どうであろう。千秋様、思(おぼ)し召(めし)は、どうお座りましょうの」
可憐(いじ)らしい遊びようをしている。が、わたしは何時の間にか、尾のないとかげが非常にからだの調子が取れなくて、歩きにくそうによちよち歩いているのを見た。
とかげ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
と言って能登守は眉をひそめて、お君の姿を可憐(いじ)らしげに見下ろしたまま立っているばかりであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
古靴屋の手に靴は穿(は)かぬが、外套(がいとう)を売る女の、釦(ぼたん)きらきらと羅紗(らしゃ)の筒袖。小間物店(こまものみせ)の若い娘が、毛糸の手袋嵌(は)めたのも、寒さを凌(しの)ぐとは見えないで、広告めくのが可憐(いじ)らしい。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのままにさせて置けない気がした。どうにかしてやらなければどんなになるか解らないように危なげに見えた。ワルトンにはアイリスの近頃の生活が急に淋しそうに見えて可憐(いじ)らしかった。
決闘場 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
何時も可憐(いじ)らしくてならなかった。
双面獣 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
きっとそう仰っしゃることと前から存じてはおりました。けれど、姫さまのお可憐(いじ)らしいお覚悟をどういたしましょう。姫さまはもう心の底に、黙って、死を
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、布令(ふれ)られていたが、やはり多くは残ってしまったものらしい。可憐(いじ)らしさ、不愍(ふびん)さ。しかもベソは掻かず、飽くまで生きんとし、生きんとし、奔(はし)り遁(のが)れる生命のたくましさ。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やはり子どもらしいが——また、可憐(いじ)らしい、と武蔵は思った。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)