古帷子ふるかたびら)” の例文
しかし女は古帷子ふるかたびらの襟を心もちあごおさえたなり、驚いたように神父を見ている。神父のいかりに満ちた言葉もわかったのかどうかはっきりしない。
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
女手がないのか、ぶざまにつぎをあてたつぎだらけの古帷子ふるかたびら経糸たていとの切れた古博多の帯を繩のようにしめ、鞘だけは丹後塗たんごぬりだが中身はたぶん竹光……腰の軽さも思いやられる。
顎十郎捕物帳:08 氷献上 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
古帷子ふるかたびらはかま穿いた、さっきの爺いさんが出て来た。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
漆紋うるしもんの、野暮ったい古帷子ふるかたびらの前を踏みひらいて毛脛を風になぶらせ、れいの、眼の下一尺もあろうと思われる馬鹿長い顔をつんだして空嘯うそぶいているさまというものは、さながら
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
もんを染めた古帷子ふるかたびらに何か黒い帯をしめた、武家ぶけの女房らしい女である。これはまだ三十代であろう。が、ちょいと見たところは年よりはずっとふけて見える。第一妙に顔色が悪い。
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
年に一度のお祭だというのに、今まで家で何をしていたのか、頭から木屑きくずだらけになり、強い薬品で焼焦げになった古帷子ふるかたびらを前下りに着て、妙なふうに両手をブランブランさせながら