効性かいしょう)” の例文
と見ると、丸髷まるまげの女が、その緋縮緬ひぢりめんそばと寄って、いつか、肩ぬげつつ裏のすべった効性かいしょうのない羽織を、上から引合せてやりながら
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ええ、効性かいしょうがないもんですから、いつお出でたんですの」おひろは銚子を取り上げながら辰之助に聞いたりした。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
帳場に横向きになって、拇指おやゆびの腹で、ぱらぱらと帳面を繰っていた、ふとった、が効性かいしょうらしい、円髷まるまげの女房が、莞爾にっこり目迎むかえたは馴染なじみらしい。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母親に来ていてもらってもいいと言っていたお袋のことばおもい出したが、効性かいしょうのない母親が、手も口もやかましい、あの人たちのなかにいられそうにも思えなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
いや、もう、人様の事をお案じ申すという効性かいしょうもござりません。……お助けを被りました御礼を先へ申さねばなりませんのでござりました。はい、先刻は何とも早や、おかげで助かりました。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)