はっ)” の例文
船員たちは歓声をあげながら、舷側に殺到して海面を眺めた、——その時、不意に濃霧が切れて、斜陽を決びた流血船の姿がはっきりと見えた。
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それらははっきりしていないが、要するにそのあたりは冬木立もあるような人家の建てこんでいないところであることさえ判ればよいのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
思うに三島の夙は、まだ分業のはっきりせぬ前に、皮細工をやっていた為に穢多になったのでありましょう。紀伊那賀郡の狩宿も皮多だとの事ですが、これも同じ結果でありましょう。
「こりゃ文章になっておらん。第一これじゃ時間の順序が立っていないじゃないか。それに場所もはっきりしない。」
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
あの海坊主を射った時、ちょっと霧が切れて、流血船がはっきり見えたでしょう? 船長、あの時僕は、流血船の吃水きっすいがいやに深いのに気がついたんです。
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それが地上にいかにも明白な色彩を画してはっきりと目にうつるところを言ったのがこの句である。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
香苗はそれをはっきりと聞いた、言葉の意味は本当には分らなかったが、なにかしらん罪深い、禁断のとばりの奥をいきなりあけて見せられたような、胸苦しい羞恥しゅうち忿いかりに身の震えるのを覚えた。
城中の霜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
川本ははっきり海坊主だと云った。
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)