出府しゅっぷ)” の例文
ついては、としも押しつまりましたし、久々で御健勝の体をも仰ぎ申したく、近く歳暮せいぼの儀をかねて、出府しゅっぷいたすつもりです。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それがだんだんに激しくなって、本山の方からも幾人かの坊主が出府しゅっぷして、江戸の末寺を説き伏せようとする。末寺の方では思い思いに党を組んで騒ぎ立てる。
半七捕物帳:25 狐と僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
明くる年の二月、藩主といっしょに出府しゅっぷするまで、半兵衛はしきりに出三郎を「角万」へつれだした。
艶書 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
間をおかず出府しゅっぷいたしまして、とるものもとりあえず深川へまいり、洲崎一帯を手をつくして探しましたが、いっこうそれらしい手がかりもなく、すでに今日で十二日
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
故に黒田の殿様が江戸出府しゅっぷあるいは帰国の時に大阪を通行する時分には、先生は屹度きっと中ノ嶋なかのしまの筑前屋敷に伺候しこうして御機嫌ごきげんを伺うと云う常例であった。或歳あるとし、安政三年か四年と思う。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かねて城明渡しの際恩顧おんここうむった幕府の目附方へ御礼かたがた、お家の再興を嘆願するために、番頭ばんがしら奥野将監おくのしょうげんと手をたずさえて出府しゅっぷした際、小平太は何物かに後から押されるような気がして
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
所詮しょせん田舎ではかんと見切って出府しゅっぷいたしたのじゃが、別に目的もないによって、先ず身の上を御依頼申すところは、龜甲屋様と存じて根岸をお尋ね申した処、鳥越へ御転居に相成ったと承わり
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「おお、なるほど、出府しゅっぷのみぎり、途上の旅舎りょしゃで、思い出ばなしから、ふとそんなことを申した覚えがある。——それもはや十年も前なのに、よう忘れずにおるものじゃ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「源右衛門は門内の花屋定吉の甥で、叔父をたよって出府しゅっぷいたした者でござりますが、そのころ丁度寺男に不自由して居りましたので、定吉の口入れで一昨年から勤めさせて居りました」
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)