凸起とっき)” の例文
象の鼻みたいな凸起とっきが、ぴーンと立ってその先がひくひくと動いた。そればかりか、お面全体が奥へひっこんだ。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
熔岩隧道は、天井の高さは三メートルから五メートルぐらい、時には、両側の壁の下のほうが土手のように高まったのや、肋骨型の凸起とっきがあったりするものがある。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
というより凸起とっきした陸地の間にわずかに船を通すに足る水の、フィンランド湾の岸にそって、午前十時ごろ、半島の町ハンゴへ寄り、それからまた原始的なアウチペラゴのなかを
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
所で、浄善の昏倒と推摩居士の発作が適確なのを確かめると、犯人は四本の玉幡を合せて、繍仏の指に凸起とっきのある方を内側にして方形を作り、それを三階の突出床の下に吊して置いたのだ。
夢殿殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
東都名所のうちその画題を隅田川花盛はなざかりとなしたる図の如きを見よ。まず丘陵の如くに凸起とっきしたる堤を描き、広々ひろびろしたる水上より花間かかん仰見あおぎみて、わずかに群集の来往らいおうせるさまを想像せしむるに過ぎず。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ある大名の下屋敷しもやしきの池であったのを埋めたのでしょう、まわりは築山つきやまらしいのがいくつか凸起とっきしているので、雁にはよき隠れ場であるので、そのころ毎晩のように一群れの雁がおりたものです。
あの時分 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
容貌かおだちは長い方で、鼻も高く眉毛まゆげも濃く、額はくしを加えたこともない蓬々ぼうぼうとしたで半ばおおわれているが、見たところほどよく発達し、よく下品な人に見るような骨張ったむげに凸起とっきした額ではない。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)