凄風せいふう)” の例文
涼風すずかぜならぬ一陣の凄風せいふう、三人のひっさげがたなにメラメラと赤暗い灯影ほかげゆるがした出会であがしら——とんとんとんとやわらかい女の足音、部屋の前にとまって両手をついた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
支那の怪物ばけもの………私は例の好奇心に促されて、一夜をの空屋に送るべく決心した。で、さらくわしくの『』の有様をただすと、いわく、半夜に凄風せいふうさっとして至る。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
広き旅店の客少なく、夜半の鐘声しんとして、凄風せいふう一陣身に染む時、長き廊下の最端に、跫然きょうぜんたる足音あり寂寞せきばくを破り近着ききたりて、黒きものとうつる障子の外なる幻影の
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と見えたのも一瞬のこと、いつのまにか、宋江と戴宗たいそうの姿は消えてくなっている。修羅しゅらの中には二つのむしろだけで、あとはさながらただ戦場の凄風せいふうにひとしい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、一陣二百人ほどは、尊氏のまわりをかこんで、凄風せいふうの中に、そそけ立ッた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)