円窓まるまど)” の例文
そして城代左近将監は、円窓まるまどちかくに端座して、てあんどんのかたわらで書見に余念もなく、はいってきた新之丞を見ると
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「いき」な建築は円窓まるまど半月窓はんげつまどとを許し、また床柱の曲線と下地窓したじまどの竹にまと藤蔓ふじづる彎曲わんきょくとをとがめない。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
同様おなじよう手燭てしょくを外に置いて内へ入って蹲踞しゃがんでいながら、思わず前の円窓まるまどを見て、フト一ヶ月ばかり前に見た怪しき老婆を思出おもいだした、さあ気味が悪くなってたまらないが
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
倉田工業から電車路に出ると、その一帯は「色街いろまち」になっていた。電車路を挾んで両側の小路には円窓まるまどを持った待合が並んでいる。夜になると夜店が立って、にぎわった。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
これが円窓まるまどだ。それからグーセフの眼には、隣の釣床に寝ているパーヴェル・イヴァーヌィチの姿が、だんだん見分けがついて来る。この男は坐って眠っている。横になると息が詰まるのだ。
グーセフ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
A中尉は軽がると受け流したまま、円窓まるまどの外を眺めていた。円窓の外に見えるのは雨あしの長い海ばかりだった。しかし彼はしばらくすると、にわかに何かにじるようにこうY中尉に声をかけた。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
持って来た手燭てしょくは便所の外に置いて、内へ入った、便所の内というのも、例の上方式の前に円窓まるまどがあって、それにすだれかかっている、蹲踞しゃがんでいながらむいので何を考えるでもなく
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)