入浴はい)” の例文
ちょうど入浴はいりごろの加減のいい湯が、広やかに四季さまざまの山のすがたをうつしているだけ、村びとは屋根ひとつ掛けず、なんらの手も加えていない。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
本陣の前の屋根のある風呂小屋が一ヵ所見えたが、後は往来ばたにあって、誰が入浴はいろうと怪しむ者はない。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明礬質みょうばんしつのこの温泉いでゆは、清水以上に玲瓏としていて、入浴はいっている人の体を美しく見せた。
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
折からこれも手拭を提げて、ゆるゆる二階を下り来るは、先ほど見たる布袋のその人、登りかけたる乙女は振り仰ぎて、おや父様、またお入浴はいりなさるの。幕なしねえ。と罪なげに笑う。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
宿酔ふつかよいあぶらをながしていると、そこへ入浴はいって来た相客の者で、さかいの町人というものが、きのう阿波から大坂へくる便船のうちでは、実におもしろいことがあったといって
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それで、お猿が入浴はいっている時は、人間は遠慮して、できるだけ邪魔をしないのだそうな。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
当惑とうわく顔を突き合わせていると、ちょうど湯殿のうらで、櫺子窓れんじまどの隙間からほのぼのと湯気ゆげが逃げて誰か入浴はいっているようす、ポシャリ、ポシャリ、忍びやかに湯を使う音がする。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
又八は裸で駈けてゆき、手桶の水を取って来て、自分でうめて、すぐ入浴はいりこむ。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんな暴風雨あらしの晩も、欠かさず入浴はいりに行くところをみると。——
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「どうじゃ、いっしょに入浴はいらないか」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)