ゆる)” の例文
そして二氏皆わたくしに借抄をゆるさうといふ好意があつて、藤井氏は家弟潤三郎に、三村氏は竹柏園主にこれを語つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
院内の人々は一人としてハツバス・ダアダアの※陋けふろうにして友を排し、褒貶はうへん並にあやまてるを知らざるものなし。されど人々は猶この翁の籍を會院に掲ぐるを甘んじゆるせり。
身には片布をだに着くるをゆるさず馬上にして城下にさらす、きゆくこと数里、断崖の上よりなげうちて死にいたらしむ、臭骸腐爛するに及ぶも白骨を収むる人なかりきといふ。
都喜姫 (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
さはれチェウスならではえゆるさぬ事を、8410
成善は家禄をいて、その五人扶持を東京に送致してもらうことを、当路の人に請うてゆるされた。それから長持一棹ひとさおの錦絵を書画兼骨董商近竹きんたけに売った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
學校の規則には、詩賦は他人の助をることをゆるさずと記したり。
十七日に蘭軒は夏時べつを着くることを乞うて、十日の後にゆるされた。勤向覚書の文に曰く。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
蘭軒は同一の自由をゆるされてゐて、此に由つて校讐の業にもつぱらにした。人は或は此ことを聞いて、比擬ひぎの当らざるをわらふであらう。しかし新邦の興隆をはかるのも人間の一事業である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)