僻見ひがみ)” の例文
勿論もちろんそんな様子の些少すこしでも見えた事は無い。自分の僻見ひがみに過ぎんのだけれども、気が済まないから愚痴も出るのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「それはお前さんの僻見ひがみじゃよ」老人は白髯を撫でながら、「私にはそんな野心はない。他人の縄張りを荒らしたところで何の利益にもならぬからの」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こういう論鋒は、主膳としては峻烈でもなく、僻見ひがみでもなく、真実そう思っているのですから、はばかりなく言ってのけてしまって、なお平然として石刷をさぐっているのです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
旦那だんなさま愚痴ぐち僻見ひがみ跡先あとさきなきことなるを思召おぼしめし悋氣りんきよりぞと可笑をかしくも有ける。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
内緒話ないしよばなしか、僻見ひがみか空想に過ぎない。厭なこつた。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それは自分の僻見ひがみで、あの人に限つてはそんな心は微塵みじんも無いのだ。その点は自分もく知つてゐる。けれども情がこまやかでないのは事実だ、冷淡なのは事実だ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)