ほとり)” の例文
それはその中の一人が話をはじめたがためであった。その話は神通川のほとりになったあんねん坊の麓に出ると云うぶらり火のことであった。
放生津物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
竜は腹の中の重味を持ち扱つて愚図/\してゐる間に、激烈な神経衰弱に襲はれて、青い湖のほとりまで差しかゝると列車が停止するやうに静かに悶死した。
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
そのほとりには黒衣めが、興に乗じて躍りゐしのみ、余の獣們は腹を満たして、各自おのおの棲居すみかに帰りしかば、洞には絶えて守護まもりなし。これより彼処かしこへ向ひたまはば、かの間道よりのぼりたまへ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
これは一月の十五日に伊豆守が田沼侯へ音物として、『ままごと』に添えてお品殿を、お贈りするのだと推察し、奪い返すことは出来ないまでも、確かめて見ようとこう思い、今宵伊豆守の邸のほとり
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)