偕老かいろう)” の例文
おもうにかれが雪のごときはだには、剳青淋漓さっせいりんりとして、悪竜あくりょうほのおを吐くにあらざれば、すくなくも、その左のかいなには、双枕ふたつまくら偕老かいろうの名や刻みたるべし。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その繁き葉の一つ一つはかんざしの脚のように必ず二本の葉が並んで、これを幾千万の夫婦の偕老かいろうの表象だとも見立て得べく
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「でも、あなたは、この間あんなことをおっしゃったじゃありませんか、私はあなたと偕老かいろうを思ってるのに、あなたは、私を、妾のように思っていらっしゃるじゃありませんか」
緑衣人伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
偕老かいろうを契約したる妻が之を争うは正当防禦にこそあれ。或は誤て争う可らざるを争うこともあらん。之を称して悋気深しと言うか。尚お是れにても直に離縁の理由とするに足らず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
匹配ひつぱい百両王姫を御す このこことつおのおの宜きを得 偕老かいろう他年白髪を期す 同心一夕紅糸を繋ぐ 大家終に団欒の日あり 名士豈遭遇の時無からん 人は周南詩句のうちに在り 夭桃満面好手姿
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
他の人はいざらず、が日本の婦人を妻とする理由は男女同権論とか財産権が如何どうとか、こういう水臭みずくさい関係より偕老かいろうちぎりを結べるにあらず、夫婦間の関係は法律以外に属するものが多い。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かくて虎十七歳十郎二十歳の冬よりも三年が間偕老かいろうの契り浅からず云々
そこで、二人は固く偕老かいろうを約して別れた。
純情狸 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)