偃武えんぶ)” の例文
元和げんな偃武えんぶ以来、おさめてさやにありし宝刀も、今はその心胆と共にびて、用に立つべきもあらず。和といい、戦という、共にこれ俳優的所作に過ぎず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
神祖偃武えんぶ以来のれ場所は実に今でなくて武士の一生涯にまたとあろうか——鐘巻自斎いかなる稀世きせいの剣妙であるとも、勝たねばならぬ、撃ち込まねばならぬ。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蓋し元和偃武えんぶ以来儒学の発達と共に勤王の精神は発達し来り、其勢や沛然はいぜんとして抗すべからず、或は源光圀みつくにをして楠氏の碑を湊川に建てしめ、或は新井白石をして親皇宣下の議を呈出せしめ
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
それ元和げんな偃武えんぶ以来、ほとんど四半世紀、忽然こつぜんとして清平の天地に砲火を上げ、竪子じゅしを推して、孤城を嬰守えいしゅし、赫々かくかくたる徳川覇府はふの余威をり、九州の大名これを合囲ごういし、百戦老功の士これを攻め
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
彼れ英邁の資を以て、親藩の威望を擁し、その直截ちょくせつ的哲理を鼓吹こすいす、天下いずくんぞ風靡ふうびせざらんや。尊王の大義は、元和げんな偃武えんぶいまだ五十年ならざるに、徳川幕府創業者の孫なる彼の口より宣伝せられぬ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)