供廻ともまわ)” の例文
「よしよし、使いの返事、よくわかった。もう今朝はここを立つ。はやはや外へ出て、そちたちも、供廻ともまわりのことなど急げ」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほんのわずかの供廻ともまわりを連れただけで二人は縦横に曠野こうや疾駆しっくしてはきつねおおかみ羚羊かもしかおおとり雉子きじなどを射た。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
人間への神々しい賜物の将来者のように神格化した、人類の恩人たちのことを考えてみても、かれらのうしろに何の供廻ともまわりも流行家具の車につんだ荷もわたしの眼にうかびはしない。
それでにわかに供廻ともまわりを作らせて、葵夫人は御禊みそぎの行列の物見車の人となったのである。やしきを出たのはずっと朝もおそくなってからだった。この一行はそれほどたいそうにも見せないふうで出た。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
袁傪は、しかし、供廻ともまわりの多勢なのを恃み、駅吏の言葉をしりぞけて、出発した。残月の光をたよりに林中の草地を通って行った時、果して一匹の猛虎もうこくさむらの中から躍り出た。
山月記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
陵の供廻ともまわりどもの穹廬きゅうろがいくつか、あたりに組立てられ、無人の境が急ににぎやかになった。用意してきた酒食がさっそく小舎こやに運び入れられ、夜は珍しい歓笑の声が森の鳥獣を驚かせた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)