侍町さむらいまち)” の例文
いつどきの事で、侍町さむらいまちの人通りのない坂道をのぼる時、大鷲おおわしが一羽、虚空こくうからいわ落下おちさがるが如く落して来て、少年を引掴ひっつかむと、たちまち雲を飛んで行く。少年は夢現ゆめうつつともわきまへぬ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ぐらぐらと揺れる一銭橋いちもんばしと云うのを渡って、土塀ばかりでうちまばらな、畠も池も所々ところどころ侍町さむらいまち幾曲いくまがり、で、突当つきあたりの松の樹の中のそのやしきに行く、……常さんのうちを思うにも、あたかもこの時、二更にこうの鐘のおと
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)