余喘よぜん)” の例文
旧字:餘喘
ついきのうまでも、まだまだとのみ先を頼むの念は強かったに、今はわが生の余喘よぜんも先の見えるような気がしてならない。
紅黄録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
支那人は、抑圧よくあつせられ、駆逐くちくせられてなお、余喘よぜんを保っている資本主義的分子や、富農や意識の高まらない女たちをめがけて、贅沢品を持ちこんでくるのだ。
国境 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
京伝や馬琴の流を汲んだ戯作者の残党が幇間ほうかん芸人と伍して僅かに余喘よぜんを保っていたのだから、偶々たまたま文学勃興ぼっこうの機運が熟してもかれらはその運動に与かる力がなくて
必要が無ければ消滅すべきであるのに、この理に当然消滅すべきものが今なお不思議にも政府と議会との間に介在し、消滅せんとしてなお余喘よぜんを保ちつつあるとは何事であるか。
この美的陶磁器生産の余喘よぜんは、各地にこれを求めることは出来るけれども、殆どが個人作家の小規模な、陶磁器製作という形であるか、あるいは一地方の一握りの需要を充たすための
日本のやきもの (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
各種の経典に説かれているので、現在、世界各地に余喘よぜんを保っている所謂いわゆる、宗教なるものは、こうした科学的の考察を粉飾して、未開の人民に教示した儀礼、方便等の迷信化された残骸である。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わずかに残骸の威をかりて一日の余喘よぜんを保とうとしている今日の徳川幕府、この衝突を中心に、目下全国いたるところに血を流し、肉を飛ばしている悲雨惨風、これをそのまま形に表わしたような
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それはいまだに余喘よぜんを保っている世代の一代表者なのである。